「大家と言えば親も同然、店子と言えば子も同然」という古諺にあるとおり、本ホームページはそのような家父長制的エートスの領する権力的言説空間なのである。
さて、今般この長屋に、ささやかながら「インターネット持仏堂」を建立することにした。
長屋の隅に小さなお堂がある風景を想像して頂ければ結構。
その持仏堂に定期的にお坊さまにお越し頂き、法話を伺おうではないかという、私にしては殊勝な心がけなのである。
法話を講じて頂くのは釈 徹宗先生。
どうして釈先生にご進講頂くことになったのかについては、いささか事情がある。
先年、本願寺出版社から『いきなりはじめる浄土真宗』という企画が持ち込まれたことがあった。
これは別に私は浄土真宗を分かりやすく講じた本を書いて欲しいという企画ではなく、浄土真宗について何も知らない人間が、ゼロから始めて刻苦勉励を重ねて、ついに仏道の何であるかを自得するに至るビルドゥングのプロセスそのものをリアルタイムで逐一報告しようという、どこかのTVの番組みたいな大胆なドキュメンタリー企画だったのである。
その着眼の妙に感心しながらも、私の場合「ゼロから刻苦勉励」プロセスを正しく歩む頼りとなるべき徳性、知力、体力などにいささか問題なしとしない。
ここはどなたかを「先達」にお願いし、そのホーリーな御手に引かれて仏道参入というのがよろしいのではないかという一案を得た。
このときふと釈先生のことを思い出した。
まだ面識を得る機会がなかったのであるが、この宗教学者である篤学の僧からは以前『親鸞の思想構造』という大部の比較宗教学の著著をご恵与頂き、その学識と慧眼にひそかに敬意を抱いていたのである。
そこで、この釈先生に私の「メンター」の仕事をお引き受け頂けないだろうかと思い、お願いしたところ、釈先生から望外のご快諾の返答を得ることができた。
というような次第で、宗教的な諸問題について、往復書簡形式で自由におしゃべりをさせて頂きながら、釈先生から仏教の基本知識をご教示願い、それをホームページ読者諸君と共有し、さらに紙数がまとまったら本にして出してしまおう、
という趣旨で本持仏堂は建立されたのである。
この上仕事を増やしてどうするんです、それよりうちの原稿はどうなっちゃうんです、という怒りと嘆きの声が東京方面から聞こえてくるようであるが、
なにしろこちらは仏さまが導かれたご縁であるからして、その叱声もあわれ鳥辺野の煙とかき消える他ないのである。
諸行無常。南無阿弥陀仏。
『インターネット持仏堂1 いきなりはじめる浄土真宗』より抜粋
